潰瘍性大腸炎とはこんな病気です
はじめに
当たなうら治療院のホームページを、ご訪問された方の中には、長い間この病に悩まされ、打開策を模索し続けて来た方も多くいらっしゃるでしょう。
或いは、聞き慣れない「潰瘍性大腸炎」という病名を告知されてしまい戸惑っている真っ最中の方もいらっしゃるかもしれません。
どのような病気でも当てはまりますが「潰瘍性大腸炎」においても、それがどのような病気なのかをシッカリと理解していただくことが、症状の改善を目指すにあたり、とても重要な事柄となります。
こちらのページで取り上げる内容は、一般的な潰瘍性大腸炎の情報、西洋医学による治療の知識となります。
当たなうら治療院のUC(潰瘍性大腸炎)改善メソッドの解説と共に、症状改善へのご参考になさってください。
潰瘍性大腸炎とはどんな病気か
潰瘍性大腸炎の患者さま及びご家族の方はご存知の通り、潰瘍性大腸炎は厚生労働省が定める難病、特定疾患です。
特定疾患とは、原因不明で治療方法が確立されていない疾患をいいます。
また、後遺症を残すおそれが少なくない疾病、言い換えれば後遺症の残りやすい疾患です。
潰瘍性大腸炎の患者数は、166,060人(平成25年度末の医療受給者証および登録者証交付件数の合計)と報告されており、患者数は年々増加しています。
日本の人口1億2710万人(総務省統計局 2014年5月1日時点の概算値より)のうち、潰瘍性大腸炎の患者は、約950人にひとりの割合でいることになります。
潰瘍性大腸炎は特定疾患のなかで、現在最も患者数の多い疾患で、発症年齢は10代から20代の若年層に多く、ピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳にみられます。
潰瘍性大腸炎は若い世代特有の疾患だと思われがちですが、高齢者でも潰瘍性大腸炎を発症します。
潰瘍性大腸炎の男女比は1:1で性別に差はありません。
潰瘍性大腸炎は大腸にびらん(ただれ)や潰瘍ができる炎症性の疾患です。
潰瘍性大腸炎とクローン病は、炎症性腸疾患(IBD)という総称でよばれます。
潰瘍性大腸炎の原因としては、食生活やアレルギー、腸内細菌や免疫系の異常が考えられていますが、はっきりとした原因は未だ特定されていません。
潰瘍性大腸炎の主な症状は、腹痛、下痢、下血です。
潰瘍性大腸炎の発症は、便がだんだんゆるくなること、便に血が混じること、頻繁におそってくる腹痛で異変に気が付きます。
潰瘍性大腸炎の分類
軽度の潰瘍性大腸炎の場合は、直腸やS状結腸の狭い部分に炎症の範囲が限定されていますが、
中等症の潰瘍性大腸炎の場合、直腸からS状結腸、下行結腸と横行結腸(の左半分)まで炎症が広がります。
さらに、重症の潰瘍性大腸炎になると大腸全体に炎症が広がります。
潰瘍性大腸炎では、病変部の広がりや経過により、いくつかのタイプに分類がなされます。
病期による分類:活動期、寛解期
重症度による分類:軽症、中等症、重症、劇症
臨床経過による分類:初回発作型、再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型
残念ながら潰瘍性大腸炎に完治という言葉はありません。
腹痛や下痢、血便などの潰瘍性大腸炎に起因する症状の出ていない時期、
良い状態を維持できる期間を寛解(かんかい)とよび、再び症状のあらわれることを再燃(さいねん)とよびます。
潰瘍性大腸炎は、疲労や食生活の変化、環境の変化などのストレスが加わることにより頻繁に再燃してしまいます。
潰瘍性大腸炎が再燃し活動期になると、ケイレン性の刺すような腹痛が頻繁におこり、排便回数も多くなります。
便には血が混じり、下痢になり、1日に20回以上トイレにかけ込むこともあります。
さらに重症の潰瘍性大腸炎になると、食欲不振、体重減少、発熱といった全身症状が現れてくることもあります。
潰瘍性大腸炎の経過による分類のなかでは、一番軽度なタイプに初回発作型があります。
このタイプは通常最初に一度だけ症状が出てその後は落ち着くのですが、何かのきっかけで再燃すると、その後は再燃と寛解を繰り返す再燃寛解型へと移行してしまうこともあるので油断は禁物です。
潰瘍性大腸炎の合併症
潰瘍性大腸炎では、大腸の炎症以外の合併症にも注意が必要です。
潰瘍性大腸炎の代表的な合併症として、結膜炎や虹彩炎などの目の病気、口内炎や重い皮膚炎、肛門周囲膿瘍、関節炎などがあります。
重症の潰瘍性大腸炎の場合、肝炎や肝硬変、膵炎といった内臓の病気を併発することもあります。
また、潰瘍性大腸炎の分類では最も危険な急性激症型の症状としては、大腸からの大量出血、大腸が腫れ上がり毒素が全身に回ってしまう中毒性巨大結腸症、穿孔という大腸が破れてしまう状態、などがあり、命の危険も出てきます。
治療は緊急入院、手術となります。
潰瘍性大腸炎の内科的治療
潰瘍性大腸炎の内科的治療では、投薬により大腸粘膜の炎症を抑え、症状をコントロールすることを治療目的とします。
5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製剤の、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)やメサラジン(ペンタサやアサコール)は、軽症から中等症の潰瘍性大腸炎の治療に有効とされています。
5-ASA製剤だけでは大腸の炎症を抑えきれない中等症から重症の潰瘍性大腸炎の治療には、副腎皮質ステロイド薬(代表的な薬剤としてプレドニゾロン[プレドニン])が用いられます。
副腎皮質ステロイド薬による治療では、副作用が問題になります。
代表的な副作用として、軽度のもので、いらいら、不眠、消化不良、吐き気、にきび、肌荒れ、体毛が濃くなる、脂肪の異常沈着(ムーンフェイス、バッファローハンプ)などがあります。
重い副作用としては、糖尿病、副腎不全、骨粗鬆症、緑内障、血栓症などがあります。
少量を短期間の服用であれば、副作用は出にくいといわれていますが、多量(30mg以上/日)の副腎皮質ステロイド薬を長期的に服用する場合には注意が必要です。
副腎皮質ステロイド薬の問題点
副腎皮質ステロイド薬について、ネットで調べた多くの方は、今すぐに服用を中止したくなったことでしょう。
わたしも内科で治療を受けていた時、副腎皮質ステロイド薬の副作用を知り、それが怖くて自己判断で勝手に服用を辞めたことがあります。
しかし、自己判断で服用を中止することは絶対にしてはなりません。
副腎皮質ステロイド薬を長期間服用していると、体内でステロイドホルモンを作る副腎の機能が弱くなってしまいます。外部から強制的にステロイドが入ってくるので、副腎は働く必要がなくなってしまうのです。
この状態で急に服用を止めると、体内のステロイドが不足してしまい、強い倦怠感、吐き気、頭痛、血圧低下などの危険な状態を引き起こしてしまいます。この状態は、ステロイド離脱症候群とよばれます。
さらには、リバウンドを起こし、潰瘍性大腸炎が急激に再燃してしまうことがあります。
わたしの場合も、勝手に副腎皮質ステロイド薬を中止した一週間後に急激に再燃をしてしまいました。
副腎皮質ステロイド薬の離脱に際しては、医師の指示のもとに、少量づつ段階的に減量していくことが必要です。
これには副腎機能を徐々に回復させるという意味もありますが、最も重要なことは、副腎皮質ステロイド薬を減量することによって、潰瘍性大腸炎の症状が再び現われるのを防ぐことです。
潰瘍性大腸炎の内科的治療では、場合によっては、5mg〜15mgの副腎皮質ステロイド薬を長期にわたって服用し続けることもあります。
潰瘍性大腸炎の急性激症型の症状である大量出血などの早急な対処が必要な場合、または内服のみでは十分に効果をあげることができない場合には、短期間に多量の副腎皮質ステロイド薬を点滴投与するステロイドパルス療法が用いられます。
免疫抑制剤
潰瘍性大腸炎の内科的治療では、副腎皮質ステロイド薬を中止できない場合に免疫抑制剤が用いられることがあります。
潰瘍性大腸炎の治療に用いられる代表的な免疫抑制剤として、アザチオプリン(イムラン)や6-メルカプトプリン(ロイケリン)があります。
自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎の場合、免疫を抑えることは治療にもなりますが、残念ながら副作用もあります。免疫力を抑制するため、感染症にかかりやすくなってしまいます。
また、重大な副作用として、肝障害、消化管障害、骨髄障害、胎児合併症などがあります。
内科的治療として免疫抑制剤を使用する際には、副腎皮質ステロイド薬を用いる場合と同様に、定期的に全身状態を観察していくことが重要です。
血球成分(白血球)除去療法
重症、難治性の潰瘍性大腸炎で副腎皮質ステロイド薬を中止できない場合や、副腎皮質ステロイド薬で十分な効果が得られない場合には、血球成分除去療法(白血球除去療法)が用いられます。
血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、L-CAP(白血球除去療法:セルソーバ)、G-CAP(顆粒球除去療法:アダカラム)があります。
体外循環療法という治療法で、血液の一部を連続的に体外へ取り出し、専用の医療機器に通し、選択的に顆粒球や単球を除去し、濾過された血液を体内へ戻します。
白血球のなかで顆粒球や単球は生体を守る上で必要不可欠ですが、潰瘍性大腸炎の場合、この顆粒球や単球が異常な活動をおこしているので、これらを除去ならびに機能の制御をし、免疫機能を正常化する目的で行われます。
新しい治療薬:抗TNFα抗体薬
潰瘍性大腸炎の新しい治療薬として、2010年にレミケードが認可されました。
レミケードは、抗TNFα抗体(こうティー・エヌ・エフ・アルファこうたい)とも呼ばれています。
潰瘍性大腸炎では、本来からだを守るべき免疫が機能異常を起こし、自分の腸を傷つけ、粘膜の炎症を起こします。
炎症には身体のなかの様々な物質が関与していますが、なかでも特に重要な役割を担うのが、TNFα(ティー・エヌ・エフ・アルファ)というサイトカインです。
サイトカインとは、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、多くは炎症に関係しています。
ホルモンのような物質で、微量でもからだの中で大きな作用を起こします。
潰瘍性大腸炎を患った大腸のなかでは、TNFαが大量につくり出され、このTNFαが炎症を引き起こし、潰瘍をつくり、下痢や血便などの症状があらわれます。
レミケードは炎症の原因であるTNFαの作用を抑え、大腸粘膜の損傷を改善させる効果があります。
レミケードは点滴薬として使用します。
最初の点滴→2週間後→6週間後、の間隔で点滴し、それ以降は 8週間おきに点滴します。
副腎皮質ステロイド薬など、既存の治療法で効果が出ない患者さまが対象となります。
潰瘍性大腸炎の外科的治療
内科的治療では対処できない重症の潰瘍性大腸炎の場合や、副作用のために副腎皮質ステロイド薬を使用できない場合、大量出血がみられる場合、中毒性巨大結腸症、穿孔、ガン化またはその疑いがある場合には、外科手術となります。